子どもをまもること

4月14日 日曜日

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4月14日(日) 休診ですが急患対応します。
午前 9-12時 午後1-6時
予約システムは使えません。
不在の場合もありますので、来院される前に電話連絡をお願いいたします。

電話055-242-0777

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Third-hand smoke 三次喫煙

先日用事があり、長距離電車に乗りました。電車の移動も楽しいものです。
停車中になんとなく車窓の外を眺めていると、車両からホームの端にある部屋へ足早に向かう一群の人がいます。電車が全線禁煙になって久しくなります。タバコの好きな人達は停車時間の長い駅でホームに降り、ガラスの箱のような喫煙所で発車の合図ぎりぎりまで煙を吸い込み、また車両に駆け込んで来るようです。
私の隣の席の人も、この喫煙組でした。ところが、戻ってきたその人の身体や吐息が、目がしみるほどタバコ臭いのです。満席の電車では逃げる場所も無いため、結局降りるまで否応もなくいがらっぽい空気を吸わされました。全線禁煙ってなんのこと?という感じです。ああ、これが、「Third-hand smoke」ってやつか、と身をもって実感しました。

日本ではあまり馴染みがありませんが、「Third-hand smoke」という言葉が海外で唱えられています。
「Third-hand」って何でしょうか。実はぴったり来る日本語訳はまだありません。
「Second-hand」と言えば、「セコハン」という日本語にもなっていますね。2番目とか2番手とか二次的ということです。転じて「中古」という意味にも使われています。では3番目の喫煙、「三次喫煙」とは?

日本でも「直接喫煙」と「間接喫煙」という言葉は、良く知られています。
タバコをくわえている本人の吸う煙よりも、周囲の人が間接的に吸わされる煙の方が有害であるということは、今や小学生でも知っています。愛煙家が患う肺気腫や肺がんより、奥さんや家族の呼吸器疾患の多さの方が問題なんですね。この副流煙を吸うのが「Second-hand smoke」。
そして喫煙する人の身体に付着した粒子や、肺から排出されるガスを吸うのが「Third-hand smoke 三次喫煙」です。
そんなのたいしたことないよ、と思われるかもしれません。
ある学校で行われた調査があります。学校ではもちろん教室は禁煙です。しかし敷地内全面禁煙でない学校で、休み時間に喫煙した教師が子ども達に授業を行うと、煙に直接さらされていないはずの子ども達の尿からニコチンの代謝物が多量に検出されるのです。喫煙を止めても数時間の間、教師はガスを出し続けるのですね。
生まれたばかりの赤ちゃんのいる家ではどうでしょうか。お父さんが、赤ちゃんに煙を吸わせないようにと気を配ってベランダでタバコを吸っています。吸い終わったので「さ、もう大丈夫だよ。抱っこしようね。」と中に入って赤ちゃんを抱きしめます。ちっとも大丈夫ではありません。お父さんの体や頬ずりする息はタバコの煙だらけです。失礼な言い方かもしれませんが、お父さんはまるでPM2.5発生器のようになってしまっています。
実際に測定したところ喫煙者がいる場合、分煙に気を配っている飲食店や家の中でも、PM2.5の濃度は実は今話題になっている北京の汚い空気と同じレベルなのだそうです。
小児では鼻や気管や肺の粘膜の感受性が高いので、煙の中の微粒子や化学物質で粘膜は傷だらけになります。長期間になれば喘息などの慢性の疾患も起きてきます。
また問題なのは、喫煙家庭で育った子どもはタバコを吸い始める率が高い点です。子どもが8歳になるまでに親が禁煙しないと、3割の子どもが未成年のうちに喫煙を始めるというデータもあります。親から子へと喫煙が遺伝するとも言えます。こんな変な遺伝はまっぴらごめんですね。

子ども達には良いものを残していきたいものです。良くないもの、負の遺産は、できれば私達の世代で断ち切りたいですね。
いつ止めるの?今でしょ!

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細菌性髄膜炎から子どもを守る

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

今年は三ヶ日が土日と重なったので、世間では短い年始休みとなりました。とは言え、私自身はこの職業についてから年末年始をゆっくりと休んだことはありませんので、例年どおりの正月でした。3年前にクリニックを始めてからは、患者さんを診る本来の仕事以外の、書類作成、依頼原稿の執筆、たな卸しやら年末の締めやら機械のメンテナンスなどの他の作業が重なり、ますます家庭を顧みない"だめなお父さん"になってしまっています。これが家庭を一番大切にするアメリカであったなら、10年以上も前にとうに離婚の羽目となっていたことでしょう。我慢強い家族にはいつも感謝しています。いや、私の場合はもはや期待すらされず完全に諦められてしまっている落ちこぼれお父さんなのかもしれませんね。

さて医者の労働環境(?)以外にも日本では数10年単位で遅れていることがあります。先日のブログでは、日本で未だに多い細菌性髄膜炎が他の先進国では20年前からほぼ根絶されているという話を書きました。なぜ他の国ではこのような感染症がなくなったのでしょうか。
それは1980年代に始まったヒブ菌と肺炎球菌のワクチン接種によるものです。アメリカで年間10000人の患者を出していた細菌性髄膜炎は、予防接種によりヒブ菌で99%以上、肺炎球菌で80%以上減少しました。この結果を受けたWHOの接種推奨勧告により現在では百数十カ国で子ども達が普通に定期接種できるワクチンとなっています。どういう理由からか日本ではこの情報は国民にはほぼ知らされておらず、未だにヒブワクチンは限られた子ども達だけしか受けることができず、肺炎球菌ワクチンは接種することも不可能な状況です。他のワクチンでも、日本では3種混合が精一杯ですが諸外国では6種混合が当たり前。
私達小児科医はこれらの重症感染症で亡くなられたり後遺症を残す子どもたちを見てきています。ごく普通の感染症でも、効果は乏しく害は多いとわかってはいても、つい手厚い(?)抗生剤投与となってしまう医師達やご両親方の思いもよく理解できます。細菌性髄膜炎の予防接種が一般的にされていない日本の現況では、抗生剤を乱用するなと言ってもそれは難しいかもしれません。日本でも他の国と同様にヒブ菌と肺炎球菌のワクチンを定期接種で受けられるようになることが私の悲願です。
皮肉なもので、各医療機関あたりの配布本数が決められてしまっているヒブワクチンでは、接種を勧めるクリニックほどかえって待ち時間が長くなってしまう現状ですが、私の説明を聞いて他のクリニックで受けてもらっても良いからぜひ接種をして頂きたいワクチンです。
また、他のワクチン接種も早く国際水準に達するようになって欲しいものです。

「世界の恵まれない子どもたちにワクチンを」というCMが流れる度に、ワクチンに関して言えば本当に恵まれていないのは日本の子ども達なのにな、と思います。

参考リンク

VPDを知って、子どもを守ろう。の会 http://www.know-vpd.jp/

細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会 http://zuimakuen.net/

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抗生物質から子どもを守る その2

先日、無駄に抗生剤を使うことで耐性菌が増えることを書きました。でも実際には、子どもさんが具合が悪くなって病院を受診すると、すぐに抗生剤が処方されることが多いと思います。これはいったいなぜでしょうか。

これは、他の外国ではほとんど見られなくなった細菌による髄膜炎や敗血症が日本では多いことと無関係ではないでしょう。

日本ではいまだに年間1000人の子ども達が細菌性の髄膜炎(脳に細菌がまわる病気)にかかっています。これは治療の進歩した現代でもいまだに恐ろしい病気です。発病の初期にはこれといった特徴や検査所見がなく、子どもを診ることに慣れた小児科専門医でも診断は非常に難しいのです。状態の悪化は非常に早く、たとえ診断や治療が迅速に行われても後遺症を残したり、ひどい場合には命が失われる場合も少なくありません。

少しでも悪くなる可能性があるのなら、できるだけひどくなる前に抗生剤で細菌をやっつけることができたら...と親御さんやお医者さんが考えるのも無理はありません。

ところが残念ながらこういった抗生剤の内服は、髄膜炎や敗血症の予防には効果が無いことが証明されているのです。

では、どうすれば良いのでしょうか。そもそも、他の国ではほぼ根絶した髄膜炎が、日本ではなぜいまだに多いのでしょうか。そのあたりを次回は書いてみようと思います。

メリークリスマス。おやすみなさい。

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抗生物質から子どもを守る

最近日本の子ども達の治療でとても問題になっていることがあります。しばらく前からいろいろな所で言われていたことなのですが、ばい菌(細菌)の治療で使われている抗生剤が効かなくなってきているのです。

強い細菌の感染と戦うために抗生剤はとても大切な切り札です。なぜその大切な抗生剤が日本では効かなくなってきたのでしょうか。

それにはいろいろな背景がありますが、私達日本人が抗生剤を乱用しすぎたのが一番の原因といわれています。

進化の頂点にある私達の体は地球上で一番強力な免疫システムを備えており、本来少々の感染は自力で修復する能力を持っています。でも軽い感染で"切り札"を切りすぎてしまうとばい菌に耐性ができてしまい、大事な時に抗生剤が聞かない羽目に...。

耐性菌の感染から子どもたちを守るために、数年前から小児科医の間から

「小児上気道炎および関連疾患に対する抗菌薬使用ガイドライン」

というガイドラインが提案されています。簡単に書くと、普通のかぜでは抗生剤を使用しないように切り札は取っておきましょう、ということです。

私が勤務医だった頃、日々困っていたのは抗生剤が効かない重症感染でした。免疫の弱った子の中には、抗生剤が効かぬまま亡くなられた子もいました。

抗生剤の汚染から子ども達の体を守りたいという気持ちが、勤務医を辞め開業した一番の動機だったかもしれません。薬漬けになった子ども達から少しでも不要な化学物質の影響を取り除き、人間に備わった自然な免疫の力を取り戻したいといつも考えています。

一方、抗生剤は大切な武器でもあります。お母様とよく相談しながら使いたいものです。

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