あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
今年は三ヶ日が土日と重なったので、世間では短い年始休みとなりました。とは言え、私自身はこの職業についてから年末年始をゆっくりと休んだことはありませんので、例年どおりの正月でした。3年前にクリニックを始めてからは、患者さんを診る本来の仕事以外の、書類作成、依頼原稿の執筆、たな卸しやら年末の締めやら機械のメンテナンスなどの他の作業が重なり、ますます家庭を顧みない"だめなお父さん"になってしまっています。これが家庭を一番大切にするアメリカであったなら、10年以上も前にとうに離婚の羽目となっていたことでしょう。我慢強い家族にはいつも感謝しています。いや、私の場合はもはや期待すらされず完全に諦められてしまっている落ちこぼれお父さんなのかもしれませんね。
さて医者の労働環境(?)以外にも日本では数10年単位で遅れていることがあります。先日のブログでは、日本で未だに多い細菌性髄膜炎が他の先進国では20年前からほぼ根絶されているという話を書きました。なぜ他の国ではこのような感染症がなくなったのでしょうか。
それは1980年代に始まったヒブ菌と肺炎球菌のワクチン接種によるものです。アメリカで年間10000人の患者を出していた細菌性髄膜炎は、予防接種によりヒブ菌で99%以上、肺炎球菌で80%以上減少しました。この結果を受けたWHOの接種推奨勧告により現在では百数十カ国で子ども達が普通に定期接種できるワクチンとなっています。どういう理由からか日本ではこの情報は国民にはほぼ知らされておらず、未だにヒブワクチンは限られた子ども達だけしか受けることができず、肺炎球菌ワクチンは接種することも不可能な状況です。他のワクチンでも、日本では3種混合が精一杯ですが諸外国では6種混合が当たり前。
私達小児科医はこれらの重症感染症で亡くなられたり後遺症を残す子どもたちを見てきています。ごく普通の感染症でも、効果は乏しく害は多いとわかってはいても、つい手厚い(?)抗生剤投与となってしまう医師達やご両親方の思いもよく理解できます。細菌性髄膜炎の予防接種が一般的にされていない日本の現況では、抗生剤を乱用するなと言ってもそれは難しいかもしれません。日本でも他の国と同様にヒブ菌と肺炎球菌のワクチンを定期接種で受けられるようになることが私の悲願です。
皮肉なもので、各医療機関あたりの配布本数が決められてしまっているヒブワクチンでは、接種を勧めるクリニックほどかえって待ち時間が長くなってしまう現状ですが、私の説明を聞いて他のクリニックで受けてもらっても良いからぜひ接種をして頂きたいワクチンです。
また、他のワクチン接種も早く国際水準に達するようになって欲しいものです。
「世界の恵まれない子どもたちにワクチンを」というCMが流れる度に、ワクチンに関して言えば本当に恵まれていないのは日本の子ども達なのにな、と思います。
参考リンク
VPDを知って、子どもを守ろう。の会 http://www.know-vpd.jp/
細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会 http://zuimakuen.net/